
産業保健師による健康コラム⑦☆【12月はハラスメント撲滅月間】職場の活力を奪う「フキハラ」を根絶し、より良い職場環境へ!
12月は「職場のハラスメント撲滅月間」です。
年末に向けて業務が多忙になり、ストレスが増加する時期は、職場におけるハラスメントが発生しやすくなる傾向があります。このような背景から、12月は厚生労働省が定める「職場のハラスメント撲滅月間」とされています。
この機会に、私たち一人ひとりがハラスメント防止の必要性を再認識し、職場での必要な取り組み(研修の実施や相談窓口の周知など)について改めて確認と周知を行うことが重要です。

見落とされがちなハラスメント「フキハラ」とは?
職場のハラスメント対策として、パワーハラスメント(パワハラ)やセクシュアルハラスメント(セクハラ)については、法改正もあり、対策の取り組みが着実に進んでいます。しかし、近年、注目され、職場の生産性や雰囲気に深刻な悪影響を及ぼすにも関わらず、見過ごされがちなハラスメントがあります。それが、フキハラ、すなわち「不機嫌ハラスメント」です。
フキハラとは、「自分の機嫌の悪さを態度や言動で周囲にぶつけ、悪影響を及ぼす行為」を指します。
具体的なフキハラの例
以下のような言動がフキハラに該当します。これらは、周囲に不快な思いをさせ、職場の人間関係を悪化させる原因となります。
・不機嫌な態度や、八つ当たり:自分の感情の起伏をそのまま態度に出し、周囲に緊張感を与える行為。
・出勤時などの挨拶を無視する:基本的なコミュニケーションを拒否し、相手に疎外感を与える行為。
・ため息や舌打ちを繰り返す:威圧感を与えたり、周囲への不満を無言で表現する行為。
・気分によって周囲への態度が極端に変わる:特定の人に対してだけ態度が冷たくなるなど、感情によって対応が一貫しない行為。
例)気に入らないことがあると、急に口数が少なくなり威圧感を出す、あるいは、あからさまに無視をする。
フキハラが職場にもたらす深刻な影響
パワハラやセクハラと異なり、フキハラの加害者は、多くの場合、自身の行為がハラスメントであるという自覚(無意識)がないケースが多く見られます。また、フキハラの被害者や周囲の従業員は、「厄介ごとだ」「あの人の個性だ」と諦め、我慢を続けてしまう傾向があります。
さらに、興味深いのは、加害者が自身にとっての目上の人や取引先に対しては、不機嫌な態度を一切出さない、というケースがしばしば指摘される点です。これは、フキハラが単なる「機嫌が悪い」という個人的な問題ではなく、「機嫌をぶつける相手を選ぶ」という、無意識下の支配的な行動の一種であることを示唆しています。

被害者と職場全体の損失
不機嫌な態度は、単に周囲を不快な気分にさせるだけに留まりません。
◆被害者への影響:我慢を続ける被害者は、「精神的な負担の増大」「ストレスの蓄積」「モチベーションややる気の低下」に見舞われます。これは、最悪の場合、「休職」や「離職」に繋がる深刻な問題です。
◆職場への影響:職場の生産性を著しく低下させ、雰囲気を悪化させます。不機嫌な人がいるだけで、周囲は萎縮し、必要な報告や相談、提案が滞り、ミスやトラブルの隠蔽に繋がるリスクも高まります。活発な議論やチームワークが阻害され、組織全体の活力が奪われてしまいます。
フキハラを根絶し、より良い職場を作るために
フキハラをなくし、誰もが安心して働ける職場環境を整備するためには、全従業員の意識改革と積極的な行動が必要です。
1. 研修による「フキハラ」の周知徹底
ハラスメント研修は、パワハラやセクハラ防止だけではなく、周囲を不快な気分にさせ、職場の雰囲気を悪くするこの【フキハラ】についても周知をすることをお勧めします。
フキハラがハラスメントであること、そしてその悪影響について明確に伝えることで、加害者となりうる人々に「不機嫌を態度に出すことはプロフェッショナルな行動ではない」という自覚を促すことが第一歩となります。

2. 「働きやすい職場」を意識したコミュニケーション
全従業員が「働きやすい職場とは何か」を意識し、自分の言動が周囲にどのような影響を与えているかを常に振り返る機会を持つことが重要です。
自分の機嫌は自分で取る:自分の感情を他者にコントロールさせたり、他者に押し付けたりしない意識を持つ。
積極的に声かけ・挨拶をする:挨拶は人間関係の基本であり、職場の雰囲気を明るく保つための重要な行動です。
客観的な指摘と建設的な改善:もしフキハラを見かけたり、その被害にあったりした場合は、感情的にならず、具体的な言動を指摘し、建設的に改善できる環境を作りましょう。相談窓口の活用もためらわないでください。
3. トップダウンでのメッセージ発信と環境整備
経営層や管理職は、フキハラを含めたあらゆるハラスメントを許さないという強いメッセージを定期的に発信し、相談しやすい環境を整備する義務があります。相談窓口の機能強化や、ハラスメントに対する厳正な対処方針を明確にすることで、従業員が安心して働ける土壌を作ることが大切です。
まとめ
フキハラは、職場の生産性、従業員のメンタルヘルス、そして企業の評判にまで悪影響を及ぼす、無視できない問題です。
12月のハラスメント撲滅月間を機に、私たち一人ひとりが「自分の感情は自分で管理し、周囲に配慮する」という意識を持ち、不機嫌が蔓延しない、活力に満ちた、より良い職場環境づくりに貢献していきましょう。誰もが笑顔で働ける職場は、必ず高い成果を生み出す基盤となります。
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